憲法の特色と基本原理

今回から本格的に憲法の解説に入っていきます。

憲法は、抽象的な話の多い科目ですので、最初は理解するのが難しいと思われるかもしれませんが、気にしないで最後まで進めていくようにしましょう。

何度も勉強していくうちに、少しずつ理解できるようになってくると思いますので気楽にいきましょう。



憲法の目次と全体像

さて、まずは憲法の目次を見てみましょう。

まだ、六法を持っていないという人もいるかもしれませんが、これから本気で法律の勉強をしていこうと思っているのであれば、必ず六法は手に入れておきましょうね。

最初は、ポケット六法とかデイリー六法なんかの安い六法でも十分だと思います。

憲法の目次は以下のようになっています。

前文部
第1章 天皇
第2章 戦争の放棄
第3章 国民の権利及び義務
第4章 国会
第5章 内閣
第6章 司法
第7章 財政
第8章 地方自治
第9章 改正
第10章 最高法規
第11章 補則

憲法は、大きく分けて以下の4つのパートに分けて考えることができます。

前文部、第1章天皇、第2章戦争の放棄を「総論」。

第3章国民の権利及び義務を「人権」。

第4章国会、第5章内閣、第6章司法、第7章財政、第8章地方自治を「統治」。

第9章改正、第10章最高法規を「憲法保障」。

総論、人権、統治、憲法保障の4つですね。

この憲法の目次と全体像は覚えておきましょう。

憲法に限らないのですが、法律の勉強をする時には、最初に六法で目次を覚えるようにしましょう

目次を覚えてしまうことで、その法律の全体像を俯瞰することができるので、個々の詳細な部分に入っていった時に、自分が今、全体の中でどの部分を勉強しているのかが分かり、迷うことがないので、その法律を早く理解することができます。

ということで、今回から、憲法総論の解説に入っていきたいと思います。

抽象的な話がしばらく続きますが、憲法を理解する上で非常に重要な内容なので、深く理解しておきましょう。

憲法の特色

前回の解説で、憲法は日本の法の中で最上位に位置づけられる最高法規であり、国民が国家に対して命令する法規範であるということを説明しました。

つまり、憲法は国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする法です。

この「憲法は国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする法である。」という憲法の定義は超重要ですので、暗記してしまいましょう

憲法はこのような法であるため、以下の3つの特色を持っています。

  1. 自由の基礎法
  2. 制限規範
  3. 最高法規

この憲法の3つの特色について1つずつ説明していきます。

自由の基礎法

日本国憲法は第3章の「国民の権利及び義務」を中心として、国民の人権を保障する規定をたくさん置いています。

19条の思想及び良心の自由、20条1項前段の信教の自由など、その多くが「◯◯の自由」という形になっているために、憲法は自由を基礎付ける法であると考えられています。

この自由の観念は「人間は生まれながらにして自由かつ平等であり、生来の権利(自然権)を持っている」という自然権の思想に基づいています。

抽象的な観念である自然権を、具体的に実定化したものが人権規定であり、それが憲法の中核を構成する根本規範となっています。

制限規範

憲法が自由の基礎法であるということは、同時に憲法が国家権力を制限する基礎法であることを意味します。

国家権力は私たち国民に対して様々な権利侵害を行なってきます。

最も分かりやすいのが警察権力です。

警察権力は、時には、最も自由への侵害度が高い身柄拘束を行う事があります。

国民の自由を守るためには、そのような国家権力を制限する必要がありますよね。

このことから、憲法は、国家権力を制限する規範であると言えます。

これから「規範」という言葉がよく出てきますが、簡単に言うと、のっとるべき規則やルールという意味です。

憲法の制限規範性と言った時に、時々勘違いしている人が多いので注意が必要なのですが、憲法の制限規範というのは、国家権力を制限するという意味であって、国民を制限するという意味ではありません

最高法規

憲法は、日本における法の最上位に位置づけられる最高法規であるということは既に解説しました。

憲法が自由の基礎法であり、制限規範であるならば、憲法より下位にある法によって、その内容を変更されることは許されるべきではありませんよね。

これを憲法の形式的最高法規性と言います。

憲法98条が「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と定めているのは、憲法が形式的に最高法規であることを宣言したものです。

ただ、それよりも重要なのは、憲法の内容が、人間の権利・自由をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する規範を中心として構成されているということです。

これが最高法規としての憲法の本質であり、実質的最高法規性と言います。



憲法の基本原理

憲法の基本原理には、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つがあります。

この3つの原理は、憲法の前文に書かれています。

ちなみに、前文は全文と区別するために、「ぜんぶん」と読まずに「まえぶん」と読むことがあります。

ということで、憲法の前文を見てみましょう。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

赤字にしているところが憲法の3つの基本原理を定めている部分です。

「主権が国民に存することを宣言」という部分が国民主権、「自由のもたらす恵沢を確保」という部分が基本的人権の尊重、「平和のうちに生存する権利を有することを確認」という部分が平和主義を定めています。

国民主権

国民主権は、国の政治のあり方を最終的に決定する力又は権威が国民にあるとする原理です。

ここでいう主権の概念は、国家の統治権、国家権力の属性としての最高独立性、国政についての最終決定権という3つの意味で使われています。

国家の統治権

国家の統治権というのは、国家が有する支配権を包括的に示す言葉です。立法権、行政権、司法権を総称する統治権とほぼ同じ意味です。

具体例としては、ポツダム宣言8項の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、 九州及四国竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」という規定の「主権」です。

国家権力の属性としての最高独立性

国家権力の属性としての最高独立性という意味での主権は、主権概念の生成過程から考えると、本来の意味での主権概念です。

「内にあっては最高、外に対しては独立」という意味で使われています。

具体例としては、前文3項の「自国の主権を維持し」という部分の主権です。

この主権の意味は、国家の独立性に重点が置かれています。

国政についての最終決定権

国政についての最終決定権というのは、国の政治のあり方を最終的に決定する力又は権威という意味です。

具体例としては、前文1項の「ここに主権が国民に存することを宣言し」という場合の主権や1条の「主権の存する日本国民の総意」という場合の主権です。

基本的人権の尊重

基本的人権というのは、人間が生まれながらにして当然に持っている権利のことであり、固有性、不可侵性、普遍性という3つの性質を持っています。

固有性というのは、人間であることにより当然認められること。

不可侵性というのは、国家権力によって侵害されないこと。

普遍性というのは、人種・性別などに関係なく人間であれば誰にでも認められること。

を意味します。

このことは、11条の基本的人権の享有と本質、97条の基本的人権の本質に規定されています。

憲法11条:国民は、すべての基本的人権の享有(きょうゆう)を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

憲法97条:この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

平和主義

日本国憲法は、過去の戦争に対する反省から、前文2項で平和主義の原理を採用し、9条で戦争と戦力の放棄を宣言しています。

憲法9条1項:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項:前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

最後に

今回は、憲法の特色と基本原理について説明しました。

試験に直接出題されることは少ない部分ですが、憲法を理解する上で非常に大切な部分ですので、しっかりと理解しておきましょう。

次回は、立憲主義と法の支配について解説します。



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